入江寛教授の平成29年度JKA補助事業研究が終了しました。
2019/04/01 (月)
入江寛教授の平成29年度JKA補助事業研究が終了
この研究は、以下の補助を受けて平成29, 30年度に実施しました。
補助事業番号 2017M-142
補助事業名 平成29年度 異常光熱電効果を用いた発電するスマート材料の開発 補助事業
補助事業者名 山梨大学クリーンエネルギー研究センター 入江 寛
1 研究の概要
熱電発電とは、排熱や未利用の熱エネルギーを電気に直接変換できる技術です。熱を電気に
変換する効果を熱電効果と呼びますが、一般的に起電力増加と共に電流が減少し、電力(起電力 ×電流)に対し起電力、電流はトレードオフ関係になります(実際の測定では、起電力の指標とし てゼーベック係数、電流の指標として電気伝導率を評価します)。当研究室では、白金もしくは酸 化白金を酸化タングステン中へ分散担持した系において光を照射すると起電力増加と共に電流 が向上する“異常光熱電効果”を見出しています(K. Suzuki, H. Irie et al., J. Appl. Phys., 119, 245109 (2016))。これは、通常の熱電発電に異常光熱電効果による発電が加算されることを意味 しており、発電効率が向上することになります。さらにこの系では光により着色するフォトクロミック 現象も示しますので、異常光熱電効果とフォトクロミック現象を用いることによって太陽光を遮光し つつ、太陽熱から電力を獲得できる多機能を有するスマート材料が創製できる可能性があります。 このように本事業では、熱電変換物性の光による高効率化および発電プラスアルファの機能を有 するマルチ機能材料を創製すべく検討を行いました。
2 研究内容
白金もしくは酸化白金の酸化タングステン中への分散担持よりも酸化タングステン上に白金も
しくは酸化白金をコートした方が電子の蓄積効果および光電流増加が大きく光熱電効果への寄 与が大きいと想定できましたので、白金(酸化白金)コート酸化タングステンを作製し、白金(酸化 白金)膜厚を変化させて検討を行いました。簡単に結果を記しますと、酸化タングステンだけではn 型の通常光熱電効果を、白金(酸化白金)を50 nmコートした酸化タングステンではn型の異常光 熱電効果、白金(酸化白金)を90 nmコートした酸化タングステンではp型の異常光熱電効果、白金 だけではp型の通常の光熱電効果を示しました。白金や酸化タングステンの有無、その膜厚によ ってあらゆる組み合わせ(n・p型×正常・異常の4種類)の物性を発現することに成功しています。
本研究の成果を活かして、熱電モジュール化(p, n型一対の熱電変換素子を用途に応じて十数 個直列接続)できれば、環境発電(エナジーハーベスティング)のための一技術、すなわち、身の 回りの未利用微小熱エネルギーを用いて、その微小熱を電力に変換する技術となり得ると考えて います。この熱→電力への変換に、光のアシストによって電力への変換効率が向上、かつ新たな 機能付与が可能となります。
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